産官学民連携シンポジウム「震災から3年が過ぎて見えてきたこと。」議事録

パネル1 被災地からの声

 

【千葉】小島妃佐子 氏( NPO山武 IT推進協会 SNS 担当理事/山武地域 SNS 協議会事務局)

被災状況は大きかったにも関わらず、殆ど報道もされなかった山武は「忘れられた被災地」とも言われている。震災後の情報源はラジオや携帯、防災行政放送などだが、必要とされる地域の情報が手に入らなかった。地域での地元住民からの情報発信がきっかけで物資の支給が始まった事例もあったが、一方で地域単体での災害対応には限界も感じた。震災後のアンケートからも地元の信頼できる情報をどう入手し、配信、共有するかが課題としてあがっており、減災を実現するための地域ネットワークの重要性を感じている。

 

【茨城】久野美和子 氏 (元常陽地域研究センター研究参与/元関東経済産業局産業部次長 / 埼玉大学特命教授) /小泉力男 氏 (ひたちなか商工会議所工業振興 課長)

久野氏:これから被災地をどう支援していくのか、という観点で宮城県の街づくりを紹介。地域の力、健康の力、環境の力が一体となり誇りと活力を育てる街づくりを目指している。また、5感の刺激により健康長寿になるという研究に基づく産官学連携のプロジェクトも検討している。

小泉氏:震災後、何かしなくてはという思いから「がんばっぺ!茨城」プロジェクトを開始した。「がんばっぺ!」= GAMBA-PPEは地域を愛し、仲間と気持ちを共有する言葉である。ロゴマークをバッジやコースターにして広めながら復興活動をする中で、本当の幸せとは何かを考えるきっかけにもなった。人とのつながりの大切さを震災から学び、今後は仲間や生産者、他地域、世界等様々な“つながる”ことに取り組んでいく。

 

【福島】会田和子 氏 (いわきテレワークセンター代表取締役社長 / 総務省地域情報化アドバイザー)

被災地の雇用のミスマッチを解消する為の働きかけをしており、時間や場所にとらわれず働くことのできるテレワークを促進すれば労働者と企業双方にとってメリットになると感じている。原発事故の影響もあり、自分で住んで良いか判断ができるような情報が必要であり、未来シナリオがみえるようにしたい。また、ひとり親家庭の在宅就業支援は福島復興の底力につながる。

 

【宮城】熊谷巧 氏(東北イノベーションキャピタル代表取締役 /日興キャピタル元社長)

震災後の産業復興、東北経済の活性化の為には産学官連携による継続的なイノベーションの創出、地域が持つシーズを顕在化させるベンチャーや企業の発展が不可欠である。更にその企業へのリスクマネーの供給とハンズオン支援が必要。その仕組みの一つとして、「東北インキュベーションファンド」を始めた。投資先企業の成長を促進する為海外ネットワークの構築も図っている。

 

【岩手】釜石望鈴 氏( NPOカタリバ/ 大槌町高校生)

高校生 MY PRROJECT!に参加、100Photos~大槌町で出会った 100 人~という大槌町の人々の笑顔を撮るプロジェクトを主宰。笑顔は心の復興であると感じ、撮影した写真を“フォトブック”にまとめ配ることで、人々の震災後の思い出の1ページをつくれた。また、このプロジェクトに参加することで、自分自身も積極的に行動することが出来るようになった。

パネル 2  防災・減災・復旧

 

 

【総合】藻谷浩介 氏 (日本総合研究所調査部主席研究員)

震災で甚大な被害を受けた地域でも零細な村町の復興は見落とされがちである。しかし、むしろ震災でそれらの地域の産業の経済的生産性は上昇しており、環境的な視点からもその将来的な価値は非常に高く、帰還する人々は必ず存在するのだから、復興は必要である。ただ、人口減少社会に突入している日本において、当該地域を単に震災以前のままに戻す形の復興は、空き家を増やすだけの無駄の多いものとなりかねない。このような事態を防ぐためにも、綿密な町再生計画が必要であるといえる。

 

【災害に強い通信】立川敬二 氏( JAXA前理事長/NTTドコモ元社長/立川技術研究所社長)

震災時、浸水の被害をうけた固定系の通信施設にかわり、移動系の通信施設が稼働したが、キャパシティ不足からやはり通信網は乱れてしまった。また、各自治体に緊急用の衛星携帯を手配していたが、結局は使われないままであった。災害時の情報通信の確保は、災害情報の確実な取得や被害情報の収集の点からしても必須であり、災害に強い通信システムの登場が望まれる中、大型の静止通信衛星と衛星通信機能をもつ携帯電話を組み合わせた「移動通信用衛星通信システム」は、普段から使用している携帯を非常時にも使用可能にすることができるため、非常に期待されているシステムである。

 

【インフラの安全確保】富田洋 氏(ジオサーチ社長)

震災後の度重なる震度 5以上の余震により、アスファルト下の砂が流動したことで地面の下に多数の空洞がうまれており、今後大きな震災が起きた場合、建物の倒壊・火災に加え、交通・物流を完全に止めてしまう地面の陥没が発生することは確実であり、特に地下鉄周辺は砂状になっているため大変危険である。被災者救護の拠点となるべき病院や駅といった施設を結んだインフラのネットワークを陥没から守るような対策が急務である。

 

【女子力とデザイン】田中美咲 氏(ダイアログプラス CCO/防災ガール代表)

「防災」が声高に主張されても、それが若者まで伝わっていないのが現状であり、若者に伝わるためには、若者言葉への翻訳という作業が必要になる。伝えたいことを伝えるためには、ただ伝えるだけではなく、「いつ・なにを・誰に向けて・どうしてほしくて」伝えるのかを考え、相手が理解しやすいものでなければならない。今だからこそ、コミュニケーションをもう一度見直してみる必要がある。

 

【高専・高専人のとりくみ】島田一雄 氏(日本無線教会事務理事/ヒューマンネットワーク高専

(HNK)顧問/都立航空高専名誉教授)

震災後、原子力人材育成ということで、高専が主体となる復興プロジェクトが様々な高専で動きつつあり、土砂を大きなベルトコンベヤーを設置して運び出したり、潮流観測システムを開発して津波を計測したりと、その規模は非常におおきい。また、高専卒業者らの連携による「 G(地理情報)空間情報プロジェクト」のような新たなプロジェクトも始動しつつあり、今後の成果が期待される。

 

パネル 3 復興に向けて

 

【行政】渡辺克也 氏 (総務省大臣官房審議官)

被災地の復旧が一段落し、住宅再建やまちづくりが本格化していく中、「新しい東北」の創造には ICTの活用が必要不可欠である。地理空間情報と ICTの組み合わせによる経済成長・地域活性化や、ICTを活用した災害に強い情報連携システムとして構築される、災害情報の集約・共有のための「公共情報コモンズ」、そしてクラウドを活用し地域医療の連携を容易にする「東北メディカルバンク計画」など、さまざまな取り組みが現在進行中である。

 

NPO活動】鎌倉幸子 氏 (NPOシャンティ国際ボランティア会広報課長)

震災直後、被災地への支援物資の供給は避難所間でかなり偏りが大きく、必要なところに必要な物資を供給する難しさを味わった経験から、マッチングやトレーシングの重要性を感じた。緊急救援活動が一段落した後は、避難所での移動図書館の活動を開始したが、震災でおおくのことが変わってしまったなかで、本のもつ「変わらなさ」がもたらす安心感は非常に大きかった。その他にも移動図書館の活動から学んだことは限りなく、思いと思いをつなぐ NPO活動の重要性を感じた。

 

【料理・食メディアでの事例】粟飯原理咲 氏 (アイランド社長)

料理好きの女性が自分で作った料理を掲載した「お料理ブログ」のポータルサイト「レシピブログ」を運営していたが、震災を契機に、火を使わない・節電といったテーマの「緊急時のアイデアレシピ」をあつめた本の販売などの企画を行ってきた。そこで感じたのは、震災から 3年を経て、調理の時間短縮が肯定的に受けとめられるようになったなど、料理の価値観が変化してきていることであり、このような変化をふまえ、「もしも」を「いつも」に溶けこませるような提案をメディアがおこなっていくべきである。

 

【ミスキャンパスによるメディアの発信力を生かした学生ボランティア支援活動】西川礼華 氏(

Sweet Smile前代表)

「世界を笑顔でいっぱいにする」をテーマに、大学のミスキャンパスが集まり、様々な NPO活動やボランティア活動の広報のお手伝いをおこなってきた。学内知名度が高く、情報発信力も高いミスキャンパスたちが、同年代の大学生に向けておこなう SNSなどを通じた広報活動は、同じ大学生を対象にしていることから親近感をもってもらうことができるために、非常に影響力が大きい。

 

【観光】須田寛 氏( JR東海相談役)

震災後、観光への自粛ムードと原発による風評被害によって、観光は深刻な打撃を長期間にわたって受け続けることとなった。観光は遊びではなく、その本義が文化活動であると同時に経済活動でもあるということへの理解と啓蒙が必要であること、さらには、どの旅館はやっている、この地域は被害がないなど、観光地に関する適切な情報の発信共有についての責任が認識されたことが、今回の震災で得られた教訓であると言える。しかしながら、「大震災が観光シーズンにおきる」という事態をいまだに誰も経験したことが無く、さらには観光地もそのような事態を想定していないために、災害時の観光客の救助が現状ではないがしろにされている。観光客も観光地の市民同様の支援を受けられるようなシステム作りが必須である。

総括・閉会の辞

 

原島博 氏(東大名誉教授/明大客員教授/映像情報メディア学会未来映像懇話会座長)

震災から 3年という月日を経て、このようなシンポジウムで各界を代表される方々と交流できる場に参加できたのは非常に得るものが大きかった。特に今回は、多くの女性がパネリストとして登壇されており、自身が主体となって物事をとらえて行動を起こし、それを一人称の言葉で語っていた点がとても印象的であった。これからの日本の未来において、震災は決して忘れてはならない存在である。しかし、いつまでもこの震災をふりかえってばかりではなく、「前に進む」という一歩が不可欠であると思う。